出血の意味について

みなさん、こんにちは。仙台つつじがおか歯科の岩本です。
昔「リンゴを噛んで血が出ませんか?」というCMがあったと思います。

今日は「歯ぐきからの出血は一体何を意味するのか?」と言う事で、歯科での「出血の検査」についてお話したいと思います。

歯医者に行くと、歯ぐきをチクチクさわる検査をすると思います。
「歯周ポケット測定」と呼ぶ事が多いですが、正確には「ポケットプロービング」と言います。
この検査の大きな目的はふたつありまして、

「歯周ポケットの深さ(←浅い場合には歯周ポケットでなく歯肉溝と呼びます)」
「検査時に血が出るか?また、それがポケットの奥からの出血なのか、入り口の所からの出血なのか?」
このふたつを主にチェックしています。

歯周ポケットに関しては、語ると長くなりますが、なるべく浅ければ浅い方がいいです。浅い場合は歯肉溝と呼ばれます。

では、本題の出血に関してです。

出血の秘密その①
歯周ポケットの奥に潰瘍ができて、歯周病が「今、進み続けている」時に出ます…。

または「歯みがきやフロス、歯間ブラシが不十分」の場合もあります…。

どちらもちょっとショックですね。

一から順を追って説明しますと、
まず歯ぐきと歯の境目にバイオフィルム(菌の集合体)がモリモリ蓄積します。

すると歯ぐきの表面にあるバリアが壊れてしまい、歯周ポケットの奥に潰瘍ができてしまいます(生のキズみたいな物です)。そこを触ると、生のキズなので、当然血は出ますよね…。それが、歯周ポケットの奥から出血する原因です。
そしてキズをずっとそのままにしておくと歯周病はどんどん進行します。

では逆に、歯周ポケットの入り口から出る出血は何なのか?と言うと、プラーク、バイオフィルムが普段上手に取りきれておらず、歯ぐきのごく浅い表面が菌による感染を起こしているためと言われています。
この場合は、適切なブラッシングと、その後のフロスか歯間ブラシの使用で改善する事が多いです(フロスと歯間ブラシの使い分けについてはぜひご質問下さい。

しかし、歯周病は一度発症しまうと完治しない感染症です。歯周病菌の量はどんなにセルフケアを頑張ってもゼロにはならず、虎視眈々と炎症の再発を狙って潜伏しているため、一度発症してからは常に危険な状態にある事を忘れないで下さい。

出血の秘密その②
最強の歯周病菌「P.gingivalis(プロフォリモナス・ジンジバーリス)←私の学校ではこんな読み方でした」の大好物は、出血です。

P.gingivalisとは?
歯周病に関連する菌のうち、最も危険度の高い「レッドコンプレックス」の3種の菌のうち、さらに最も危険なものです。(ところでレッドコンプレックスって、すごい勢いのあるネーミングですよね…。)
ひと昔前は、特別な菌として感染を恐れられていましたが、現在は常在菌として成人の口腔内にいるありふれた菌になってきていると言われています。

この菌は、鉄分があると元気になる事がわかっています。つまり、歯ぐきからの出血があると大繁殖してしまいます。
バイオフィルムという、細菌の集合住宅のような物に守られて存在しているのですが、そのバイオフィルム自体の病原性も出血によって活性化してしまうので、なるべく出血はしないようにする必要があります。

いかがでしたでしょうか?
ポケットプロービング検査時に、全体の4分の1以上(25%以上)に出血があったら、歯周病の危険度が高い患者さんと言えます。
また、パーセンテージに関わらず、特定の部位からずっと出血が見られる場合も、歯周病のリスクは高いです。

今日のブログを通して、あのチクチク検査の意義をご理解いただけたら幸いです(*^o^*)